高度専門職のポイント計算における年収に株主配当を含めることはできるか#

日本の在留資格制度において、「高度専門職(Highly Skilled Professional)」は、学歴、職歴、年収などの項目ごとにポイントを付与し、その合計点数によって優遇措置を与える制度です。この中で「年収」は非常に大きなウェイトを占める項目であり、多くの申請者が加点を目指す重要な要素となっています。

しかし、会社経営者や投資家としての側面を持つ申請者の場合、「株主配当(Dividends)」を年収として合算できるかという疑問が生じることがあります。結論から申し上げますと、高度専門職のポイント計算における年収に、株主配当を含めることは原則としてできません。

本記事では、入管法および関連する運用指針に基づき、なぜ株主配当が年収に含まれないのか、そして「年収」として認められる報酬の範囲について詳しく解説します。

高度専門職における「年収」の定義#

まず、高度専門職のポイント計算における「年収」とは何を指すのかを正確に理解する必要があります。入管法の運用上、ここでの年収は「契約機関から受ける報酬の年額」と定義されています。

ここでの重要なキーワードは「契約機関」と「報酬」です。

  1. 契約機関からの支払いであること 申請者が所属する(または所属予定の)企業や機関から支払われる金銭でなければなりません。副業収入や不動産収入、あるいは別の会社からの収入は、原則として主たる活動の年収には合算されません(※高度専門職1号cなどの経営・管理活動において、複数の機関から報酬を受ける場合の特例を除く)。

  2. 労務や業務の対価(報酬)であること ここでの報酬とは、一定の役務提供に対する対価として支払われるものを指します。つまり、働いたことに対する給与や賞与などが該当します。

株主配当が含まれない理由#

株主配当が高度専門職の年収に含まれない理由は、配当の法的性質にあります。

株主配当は、会社に出資した「株主」に対して、会社が利益の一部を分配するものです。これは「資産運用による収益(不労所得)」としての性質を持ち、「業務の対価(労働の対価)」とは見なされません。たとえ申請者がその会社の代表取締役であり、かつ大株主であったとしても、役員としての業務に対する対価である「役員報酬」と、出資者としての権利である「配当金」は明確に区別されます。

入国管理局の審査において重視されるのは、その外国人が日本において高度な専門能力を発揮し、その対価としてどれだけの経済的評価を受けているかという点です。資産所得である配当金は、本人の専門能力や業務遂行に対する直接的な評価指標とは見なされないため、ポイント計算の対象外となります。

ポイント計算に含まれるもの・含まれないもの#

正確なポイント計算を行うためには、給与明細や支払調書に記載される金額のうち、何が含まれ、何が除外されるかを整理する必要があります。

ポイント計算に含まれるもの#

基本的に「課税対象となる固定的な報酬」が対象です。

  • 基本給(月額給与)
  • 賞与(ボーナス)
    • 過去の実績ではなく、向こう1年間の見込み額として契約書等で確約されている必要があります。
  • 役員報酬
    • 経営者や役員の場合、株主総会等で決議された役員報酬は年収に含まれます。

ポイント計算に含まれないもの#

以下のような手当や収入は、たとえ課税対象であっても、あるいは手取り収入の一部であっても、高度専門職の「年収」からは除外して計算する必要があります。

  • 株主配当
    • 前述の通り、投資に対するリターンであるため対象外です。
  • 超過勤務手当(残業代)
    • 申請時点での「見込み年収」を算出する際、残業代は不確定な要素であるため含めることができません(すでに支払われた過去の年収を証明する場合を除く場合がありますが、基本的には契約上の確定額で見ます)。
  • 通勤手当
    • 実費弁償的な性格を持つため、報酬とは見なされません。
  • 扶養手当・住宅手当等の変動的な手当
    • これらは審査実務上、厳密には判断が分かれることがありますが、基本的には業務の対価性よりも福利厚生的な側面が強いため、除外して考えるのが安全です。

経営者の場合の注意点#

自身で会社を設立し、経営管理ビザ等から高度専門職への切り替えを検討されている方の場合、税金対策として「役員報酬を低く抑え、配当金で収入を得る」という手法をとることがあります。しかし、高度専門職の申請を目指す場合は、この構成が不利に働く可能性があります。

例えば、トータルの手取り額が同じ1,000万円であっても、内訳によって以下のように判定が異なります。

  • ケースA:役員報酬1,000万円、配当0円
    • ポイント計算上の年収は1,000万円として扱われます。これにより、年収による高いポイント獲得が見込めます。
  • ケースB:役員報酬300万円、配当700万円
    • ポイント計算上の年収は300万円となります。高度専門職には最低年収基準(300万円)がありますが、ポイント加点はほとんど得られません。

したがって、将来的に高度専門職の取得を計画している経営者は、決算期における役員報酬の設定額について、ビザの要件を十分に考慮した上で決定する必要があります。

まとめ#

高度専門職のポイント計算における年収には、株主配当を含めることはできません。年収として認められるのは、あくまで契約機関からの業務の対価としての「報酬(給与、賞与、役員報酬)」に限られます。

配当金は資産所得であり、専門性や職務に対する対価とは異なるものとして扱われるためです。特にご自身で会社を経営されている方は、役員報酬と配当金のバランスがビザ申請に大きな影響を与えることを理解し、計画的な報酬設計を行うことが重要です。


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