高度専門職ビザの年収要件と通勤手当の取り扱いについて#

日本の在留資格「高度専門職」は、国内の産業にイノベーションをもたらし、労働市場の活性化を促進することが期待される優秀な外国人材を受け入れるための制度です。この在留資格の認定は、学歴、職歴、年収などの項目を点数化し、合計が一定基準(70点以上)に達するかどうかで判断されるポイント制が採用されています。

中でも「年収」は、申請者の専門性や市場価値を客観的に示す重要な指標として、配点の中でも大きなウェイトを占めています。しかし、この年収の計算には注意すべきルールが存在します。特に、多くの企業で支給される「通勤手当」は、原則として年収要件の計算から除外されます。この記事では、なぜ通勤手当が年収に含まれないのか、その根拠と具体的な考え方について、客観的な視点から詳しく解説します。

高度専門職制度における年収の役割#

高度専門職制度では、申請者の活動内容に応じて「高度学術研究活動(1号イ)」「高度専門・技術活動(1号ロ)」「高度経営・管理活動(1号ハ)」の3つに分類されます。いずれの類型においても、ポイント計算表に基づいて評価が行われます。

年収に関するポイントは以下の通りです(「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の場合)。

  • 1,000万円以上:40点
  • 900万円 〜 1,000万円未満:35点
  • 800万円 〜 900万円未満:30点
  • 700万円 〜 800万円未満:25点
  • 600万円 〜 700万円未満:20点
  • 500万円 〜 600万円未満:15点
  • 400万円 〜 500万円未満:10点

このように、年収額がポイントに直接的に影響するため、正確な年収額を算出することが申請の成否を左右する重要な要素となります。なお、最低限の要件として、年収が300万円以上であることが必須です。

年収要件から除外される手当の基本原則#

出入国管理及び難民認定法(入管法)において、高度専門職の年収要件で審査されるのは「報酬」です。この「報酬」とは、日本で行う活動に対して、日本の機関から支払われる「職務遂行の対価」を指します。

この定義に基づくと、受け取る金銭が「職務遂行の対価」ではないと判断されるものは、報酬に含まれません。その代表例が「実費弁償」の性質を持つ手当です。実費弁償とは、業務を遂行する上で発生した、または発生するであろう費用を補填するために支払われる金銭を意味します。

なぜ通勤手当は年収に含まれないのか#

通勤手当は、この「実費弁償」の性質を持つ手当の典型例です。自宅から勤務先までの移動にかかる交通費を補填する目的で支給されるものであり、労働者が提供する労働そのものへの対価とは考えられていません。

したがって、所得税法上の非課税限度額内であるかどうかにかかわらず、支給される通勤手当の全額が、高度専門職の年収計算からは除外されるのが原則的な取り扱いです。

例えば、月給の内訳が「基本給35万円+役職手当5万円+通勤手当2万円」の場合、年収計算の基礎となる月額は、通勤手当を除いた40万円(35万円+5万円)となります。

通勤手当以外に除外される可能性のある手当#

通勤手当と同様に、「実費弁償」と見なされる可能性のある手当には以下のようなものがあります。

  • 出張手当・旅費交通費: 業務上の出張に伴う移動費や宿泊費、日当など。
  • 赴任手当: 転勤などに伴う引越し費用や支度金の補填。
  • 住宅手当: この手当は判断が分かれる場合があります。会社が家賃の実費を補填する形で支払う場合は「実費弁償」と見なされ除外される可能性があります。一方で、居住形態にかかわらず全従業員に一律の金額を支給する場合は、「職務の対価」の一部(福利厚生的な給与)と見なされ、報酬に含まれることがあります。個別の契約内容や支給実態によって判断が異なります。

重要な判断基準は、その手当が「労働の対価」として支払われているか、それとも「発生した経費の補填」として支払われているか、という点にあります。

年収要件に含まれる手当の例#

反対に、「職務遂行の対価」として年収に含まれる手当は以下の通りです。

  • 基本給
  • 役職手当、職務手当など: 地位や職務内容に応じて支払われる手当。
  • 時間外勤務手当(残業代)、深夜手当、休日出勤手当: 提供された労働時間や労働環境に応じて支払われる対価。
  • 賞与(ボーナス): 会社の業績や個人の貢献度に応じて支払われる、労働の対価と見なされる給与。

これらの手当は、労働者の能力、責任、貢献、または労働時間に対して支払われるものであるため、報酬として年収計算に含めることができます。

まとめ#

高度専門職ビザの申請において、年収は極めて重要なポイント項目です。年収を計算する際には、給与明細や雇用契約書に記載されているすべての手当が対象となるわけではありません。

特に「通勤手当」は、労働の対価ではなく、交通費という実費を補填するものであるため、原則として年収から除外されます。申請の準備段階で、自身の給与に含まれる各手当の性質を正確に把握し、どれが「報酬」に該当するのかを慎重に確認することが、円滑な手続きのために不可欠です。


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