高度人材ポイント制度における年収の虚偽申告とその罰則#
日本の「高度専門職」ビザは、専門的な知識や技術を持つ外国人材を誘致するために設けられた在留資格です。この資格の認定には、学歴、職歴、年収などを点数化する「高度人材ポイント制」が用いられ、特に年収はポイント計算において非常に重要な要素を占めます。
しかし、もし認定を有利に進めるために、意図的に実態と異なる高い年収見込みを申告した場合、どのような事態が待ち受けているのでしょうか。ここでは、虚偽の年収見込みで高度人材ポイントを計算した場合に科される可能性のある罰則や不利益について、客観的な情報に基づいて解説します。
虚偽申告が発覚した場合の直接的な罰則#
虚偽の申告が発覚した場合、申請者には極めて厳しい処分が下される可能性があります。これらは出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)に定められています。
1. 在留資格の取消し#
最も直接的で重大な処分は、在留資格そのものの取消しです。入管法第22条の4第1項には、在留資格の取消事由が定められています。虚偽の年収を申告して在留資格を得た場合、同項の「偽りその他不正の手段により、…上陸許可の証印等を受けた場合」に該当すると判断される可能性が非常に高いです。 在留資格が取り消されると、日本に滞在する法的な根拠を失うことになります。
2. 退去強制#
在留資格が取り消された場合、その外国人は日本から退去しなければなりません。自主的に出国しない場合や、悪質性が高いと判断された場合には、入管法第24条に基づき退去強制(いわゆる強制送還)の対象となります。退去強制となれば、自身の意思に関わらず日本から出国させられることになります。
3. 刑事罰#
虚偽の申請行為は、単なる行政処分に留まらず、刑事罰の対象となる可能性もあります。入管法第70条には、偽りの記載がある文書を提出して在留資格の許可を受けた者に対し、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と規定されています。悪質なケースでは、刑事事件として立件されるリスクも存在します。
将来にわたる深刻な影響#
一度の虚偽申告は、その後の人生設計に長期的な影響を及ぼします。
1. 日本への再入国制限#
退去強制処分を受けると、原則として5年間(場合によっては10年間)、日本への上陸が拒否されます(入管法第5条)。これは、将来的に仕事や家族の事情で日本に戻りたいと考えても、長期間にわたり入国が不可能になることを意味します。
2. 永住許可申請への絶望的な影響#
高度専門職ビザの大きなメリットの一つに、永住許可申請までの期間が短縮される点があります。しかし、虚偽申告の事実が発覚すれば、この優遇措置は当然受けられません。それだけでなく、将来、他の在留資格で要件を満たして永住許可を申請しようとしても、「素行が善良であること」という要件を満たさないと判断され、許可される可能性は限りなく低くなります。
3. 所属機関(会社)への影響#
虚偽申告のリスクは、申請者本人だけに留まりません。雇用主である企業側が虚偽の申告を認識、あるいは主導していた場合、不法就労助長罪(入管法第73条の2)に問われる可能性があります。また、そうでなくとも、当該企業は出入国在留管理庁から管理体制を問題視され、今後、他の外国人材を雇用する際の審査が格段に厳しくなるなどの不利益を被る可能性があります。
意図的でない場合(見込みとの乖離)の扱いは?#
高度人材ポイント制度における年収は「見込み額」で計算されるため、会社の業績不振など、やむを得ない事情で結果的に申告額を下回るケースも考えられます。 重要なのは、申請時に「意図的な偽り」があったかどうかです。合理的な根拠(雇用契約書、事業計画など)に基づいて年収見込みを算出し、誠実に申請した結果、実績が伴わなかった場合と、当初から達成不可能な額を意図的に高く見せかけて申告した場合とでは、当局の判断は大きく異なります。 ただし、客観的に見て著しく不合理な年収見込みを申告した場合、意図的な虚偽とみなされるリスクは高まりますので、注意が必要です。
まとめ#
高度人材ポイント制度において、虚偽の年収見込みを申告する行為は、極めてリスクの高い行為です。発覚した場合には、在留資格の取消しや退去強制、さらには刑事罰といった厳しい処分が科されるだけでなく、将来にわたって日本への入国が制限されるなど、取り返しのつかない事態を招きます。 在留資格の申請は、いかなる場合においても、事実に基づいた正確な情報で行うことが不可欠です。