永住者が本国へ完全に帰国する際の手続きと年金の脱退一時金について#
永住者として日本に長年居住していた方が、母国へ完全に帰国(完全帰国)を決断されるケースがあります。永住許可は取得難易度が高い資格ですが、日本を離れると決めた場合には、適切な手続きを経て資格を返納し、将来の税務リスクなどを回避する必要があります。また、長年支払ってきた公的年金についても、条件を満たせば「脱退一時金」として一部払い戻しを受けることが可能です。
ここでは、永住者が日本を完全に引き払う際に行うべき入管手続き、役所での手続き、および年金の脱退一時金の実務について詳細に解説します。
入管法上の手続き:永住者資格の喪失#
「完全帰国」とは、日本での生活拠点をなくし、再入国の意思を持たずに日本を出国することを指します。この場合、永住者の在留資格は喪失することになります。
在留カードの返納#
手続きは、出国の際、空港の出国審査場で行います。審査官に対し、在留カードを提示した上で「完全帰国するため、在留カードを返納します(I am leaving Japan permanently)」と明確に伝えてください。
審査官は在留カードに穴を開け(無効化処理)、そのカードを本人に返還します。これで在留資格は消滅します。 この際、出国用EDカード(再入国用)の「再入国許可による出国を希望します」という欄にはチェックを入れないように注意してください。これにチェックを入れてしまうと「みなし再入国許可」による一時的な出国と扱われ、住民票や税金の支払義務が継続してしまうリスクが生じます。
永住許可は「維持」できるか#
「念のため永住権を残しておきたい」と考える方もいますが、生活の本拠が日本になくなる場合、原則として永住者の要件を満たさなくなります。再入国許可(有効期限最大5年)を取得して出国し、期限内に戻れば資格は維持されますが、その間も日本国内での納税義務等が及ぶ可能性があるため、実態に即した判断が必要です。
市区町村役場・税務署での手続き#
出国前には、居住していた市区町村役場での手続きが必須です。
転出届の提出#
帰国日が決まったら、市区町村役場に「海外への転出届」を提出します。これにより住民票が除票され、国民健康保険や国民年金の加入義務がなくなります。これを忘れると、帰国後も保険料の請求が続くことになります。
住民税の精算と納税管理人の選任#
住民税は、その年の1月1日時点で日本に住所がある人に対し、前年の所得に基づいて課税されます。したがって、年度の途中で帰国する場合でも、未払いの住民税がある場合は全額納付する必要があります。
帰国時点でまだ請求書が届いていない住民税(翌年6月以降に課税される分など)がある場合は、日本国内に居住する知人などを「納税管理人(のうぜいかんりにん)」として選任し、役所に届け出る必要があります。納税管理人は、本人に代わって納税通知書を受け取り、税金を納める役割を担います。
年金の脱退一時金について#
日本の公的年金(国民年金・厚生年金保険)に6ヶ月以上加入していた外国人は、帰国後に「脱退一時金」を請求することができます。特に永住者の方は加入期間が長いケースが多く、受給額も高額になる傾向があります。
受給要件#
以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 日本国籍を有していないこと。
- 公的年金制度の被保険者期間が通算6ヶ月以上あること。
- 日本国内に住所を有していないこと(転出届を提出済であること)。
- 年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことがないこと。
請求期限と手続き#
日本を出国してから(住民票を抜いてから)2年以内に、日本年金機構へ請求書を郵送する必要があります。請求書には、パスポートの写し(出国スタンプのページ等)、振込先銀行口座の証明書類、年金手帳などを添付します。
注意点:20.42%の源泉徴収#
厚生年金からの脱退一時金には、20.42%の所得税が源泉徴収されます。つまり、支給決定額の約8割しか振り込まれません。しかし、この徴収された税金は、別途「還付申告」を行うことで取り戻すことが可能です。
脱退一時金の税金還付手続き#
源泉徴収された20.42%を取り戻すためには、税務署に対して確定申告(退職所得の選択課税による還付申告)を行う必要があります。
- 脱退一時金の受給通知を受け取る: 海外の住所に「脱退一時金支給決定通知書」が届きます。
- 納税管理人の活用: すでに帰国している本人は税務署へ行けないため、日本国内の「納税管理人」を通じて申告を行います。
- 還付金の受領: 還付金は納税管理人の銀行口座に振り込まれ、そこから海外の本人へ送金してもらう流れが一般的です。
まとめ#
永住者が完全帰国する場合、単に出国するだけでなく、入管での在留カード返納、役所での転出届、税金の精算を確実に行うことが重要です。また、年金の脱退一時金は「払い込んだ保険料の掛け捨て」を防ぐ重要な権利です。特に税金の還付手続きまで含めるとプロセスは複雑になるため、帰国前に納税管理人を確保しておくなど、計画的な準備が求められます。