海外の両親を扶養に入れている場合の「適正な扶養」の証明について#
日本に在留する外国人が、本国に残した両親を税法上の扶養親族として申告したり、在留資格(ビザ)の申請において扶養の事実を主張したりするケースは少なくありません。しかし、日本の出入国在留管理庁(入管)の審査においては、単に申請書に名前を書くだけでは不十分であり、客観的かつ継続的な「適正な扶養」の事実を証明することが強く求められます。
特に、在留期間更新許可申請や永住許可申請の際、扶養の実態が疑われると、納税義務の不履行(不当な扶養控除による脱税の疑い)や、生計要件の欠如とみなされ、審査に極めて不利な影響を及ぼす可能性があります。ここでは、入管実務の観点から見た「適正な扶養」の証明方法とその重要性について解説します。
扶養の事実を証明する「送金記録」の重要性#
入管審査において「扶養している」と認められるためには、口頭での説明や現金の受け渡しではなく、第三者が確認できる客観的な記録が必要です。最も重要視されるのが「送金証明書(Remittance Record)」です。
認められる送金方法#
原則として、金融機関を通じた送金記録が必須となります。
- 銀行送金: 日本の銀行から現地の銀行口座への送金控え。
- 国際送金サービス: ウエスタンユニオンやWiseなどの正規の資金移動業者を利用した際の明細書。
これらの書類には、送金日、送金金額、送金人(申請人)、受取人(被扶養者)の氏名が明確に記載されている必要があります。
認められにくい、または認められない方法#
- 手渡し: 帰国時に現金を直接手渡したと主張しても、入管当局はそれを証明として認めません。パスポートの出入国記録と整合していても、実際にお金が渡ったかは不明だからです。
- 知人経由: 友人に現金を託した場合も、客観的な証明能力を欠きます。
- クレジットカードの家族カード: 家族カードを現地で両親が使用しているケースについては、利用明細と引き落とし口座(申請人の口座)の記録をセットで提出することで認められる場合もありますが、生活費としての利用実態が明確でなければなりません。
送金の「継続性」と「金額」の妥当性#
単に一度だけ送金した事実があっても、それをもって「扶養している」とはみなされません。「適正な扶養」と認められるためには、以下の要素満たす必要があります。
継続的であること#
生活費の援助である以上、送金は定期的である必要があります。毎月、あるいは数ヶ月に一度など、年間を通じてコンスタントに送金が行われている実績が必要です。審査の直前に一度だけ大金を送金したようなケースは、「審査対策(アリバイ作り)」と疑われる可能性が高く、評価されないことがあります。
金額が妥当であること#
送金額は、現地の物価水準や両親の生活状況に見合ったものでなければなりません。例えば、物価の安い国であっても、年に数千円程度の送金では「主たる生計維持者」としての扶養実態があるとは認められ難いでしょう。一方で、申請人の収入に対して不釣り合いなほど高額な送金も不自然です。
扶養人数と収入のバランス(生計要件への影響)#
多くの外国人が誤解しやすい点として、扶養人数と申請人の収入の関係が挙げられます。節税のために多くの親族を扶養に入れるケースが見受けられますが、これは入管審査において「諸刃の剣」となります。
入管は、申請人の年収で、申請人自身と日本にいる家族、さらに海外にいる扶養家族全員が生活できるかどうかを審査します(生計要件)。例えば、年収300万円の申請人が、海外の両親や兄弟姉妹など計5人を扶養に入れている場合、一人当たりの生活費が極端に低くなり、「日本での生活および海外への送金を含めて、その収入で本当に生活が成り立っているのか?」という疑義が生じます。
もし、実際の送金実態がないにもかかわらず、税金を安くするために扶養控除を受けていたことが発覚した場合、それは「虚偽の申告」とみなされ、在留状況不良(素行善良要件の欠格)として、次回のビザ更新期間が短縮されたり、永住許可が不許可になったりする重大なリスクとなります。
公的書類による親族関係の証明#
送金記録と併せて必ず求められるのが、親族関係を証明する公的書類です。
- 出生証明書(Birth Certificate)
- 家族登録簿(Family Register)
- 婚姻証明書(Marriage Certificate)
これらの書類によって、送金受取人が申請人の実の親であることを立証します。国によっては書類の名称が異なりますが、政府機関が発行した公式なものであり、必要に応じて日本語訳を添付することが求められます。
まとめ#
海外の両親を扶養に入れていることを入管審査で認めてもらうためには、「客観的な送金記録(銀行等の明細)」「定期的かつ十分な送金実績」「収入に見合った適正な扶養人数」の3点が不可欠です。 現金の手渡しは証明になりません。また、節税目的のみで実態のない扶養申告を行うことは、将来の在留資格審査において致命的なマイナス要因となり得ます。誠実かつ透明性のある記録管理を行い、常に説明責任を果たせる状態にしておくことが、日本での安定した在留生活を守ることにつながります。