高度専門職ポイント計算における日本語能力証明書類の有効期限と紛失時の対応#
日本の在留資格制度において、「高度専門職(Highly Skilled Professional)」は、学歴、職歴、年収、そして日本語能力などの項目ごとにポイントを付与し、その合計が70点以上または80点以上に達する場合に優遇措置を与える制度です。このポイント計算において、日本語能力は最大15ポイント(N1相当)または10ポイント(N2相当)を加算できる重要な要素です。
しかし、申請準備を進める中で、「昔取得した日本語能力試験(JLPT)の合格証は有効なのか」「合格証書を紛失してしまった場合はどうすればよいのか」といった疑問を持つ申請者は少なくありません。本記事では、高度専門職ポイント申請における日本語能力証明の有効期限や、書類を紛失した際の具体的な対応策、および関連する注意点について詳しく解説します。
日本語能力証明書類の「有効期限」について#
入管手続きにおいて、提出書類には一般的に「発行から3ヶ月以内」という有効期限が設けられているものが多く存在します(住民票や納税証明書など)。しかし、日本語能力を証明する書類に関しては、原則として有効期限はありません。
日本語能力試験(JLPT)の場合#
日本語能力試験(JLPT)の認定結果には有効期限が設けられていません。したがって、10年前に取得したN1(または旧1級)の合格証であっても、現在の日本語能力を証明する書類として高度専門職ポイントの加算対象となります。
多くの大学入試や企業の採用選考では「過去2年以内のスコア」を求められることが一般的ですが、入管制度における高度専門職ポイント計算では、過去に一度認定された能力は(特段の事情がない限り)維持されているものとして扱われます。また、2010年の改定以前に実施されていた「旧試験」の1級および2級についても、それぞれ現在のN1およびN2と同等の資格として認められます。
BJTビジネス日本語能力テストの場合#
BJT(Business Japanese Proficiency Test)についても同様に、スコア自体に有効期限はありません。高度専門職ポイントにおいては、以下の基準で評価されます。
- 480点以上:15ポイント(JLPT N1相当)
- 400点以上:10ポイント(JLPT N2相当)
テスト実施団体や過去の制度によっては「スコアの有効期限」に関する記載がある場合もありますが、入管申請の実務上は、取得時期に関わらず証明書として有効に機能します。
証明書類を「紛失」した場合の対応#
引越しや経年により、オリジナルの「合格証書」や「認定書」を紛失してしまうケースは多々あります。原本の提出(または提示)ができない場合、ポイントを立証することができません。この場合、再発行手続きを行う必要があります。
日本語能力試験(JLPT)の再発行手続き#
JLPTの合格証書(賞状のような形式のもの)そのものは、原則として再発行されません。その代わりに、**「認定結果及び成績に関する証明書(Certificate of Result and Scores)」**の発行を申請します。これは公的な証明書として、合格証書と同等の効力を持ちます。
- 日本国内で受験した場合: 日本国際教育支援協会(JEES)のウェブサイトから「認定結果及び成績に関する証明書」の発行申請を行います。
- 海外で受験した場合: 受験した国や地域の実施機関、または国際交流基金(The Japan Foundation)を通じて申請を行います。
発行には通常1週間から2週間程度、郵送を含めるとそれ以上の時間がかかる場合があります。申請期限が迫っている場合は、早急に手続きを開始する必要があります。
BJTのスコアレポート再発行#
BJTの場合も、運営団体のウェブサイトを通じて「成績証明書」の再発行依頼が可能です。デジタル証明書として発行される場合もありますが、入管申請においては、その真偽を確認できる仕組み(照会用URLやコードなど)が整っているプリントアウト、あるいは正式な紙の証明書が求められます。
日本語能力試験以外の証明方法(大学での専攻)#
日本語能力試験を受けていない場合でも、日本語能力に関するポイントを獲得できるルートが存在します。それは「外国の大学において日本語を専攻して卒業した」場合です。
この場合、15ポイント(N1相当)が付与されます。証明書類としては、以下のものが必要です。
- 卒業証明書(学位記): 学位を取得したことを証明するもの。
- 成績証明書(トランスクリプト): 「日本語」を専攻(Major)したことが明記されているもの。
単に教養科目として日本語のクラスをいくつか履修しただけでは認められず、あくまで「専攻(Major)」である必要があります。大学によっては「日本研究(Japanese Studies)」などの名称である場合もありますが、カリキュラムの内容として日本語教育が主体であることが成績証明書等から読み取れる必要があります。
申請実務における注意点#
高度専門職の申請において、日本語能力証明書類を提出する際には、以下の点に注意が必要です。
氏名の変更がある場合#
結婚などで姓が変わっている場合、合格証書に記載された氏名と、現在のパスポート上の氏名が一致しないことがあります。この場合、同一人物であることを証明するために、氏名の変更履歴が記載された公的書類(戸籍謄本や結婚証明書など)を併せて提出する必要があります。
原本の提示と写しの提出#
窓口申請の場合、原則として原本(Original)を提示し、その写し(Copy)を提出します。オンライン申請の場合は、PDF等のデータをアップロードしますが、審査官から原本の郵送を求められる可能性に備え、手元に原本(または正式に再発行された成績証明書)を確実に保管しておくことが重要です。
複数の証明を持っている場合#
例えば、「JLPT N1」と「BJT 500点」の両方を持っている場合でも、日本語能力項目として加算できるのは上限の15ポイントまでです。両方を提出しても30ポイントにはなりません。最も確実に証明できる書類を一つ選択して提出すれば十分です。ただし、N2(10点)とBJT400点(10点)を持っていて、かつ大学で日本語を専攻(15点)している場合は、最も高いポイントが得られる「大学での専攻」を使って申請するのが合理的です。
まとめ#
高度専門職ポイントにおける日本語能力の証明について、重要なポイントは以下の通りです。
- JLPTやBJTのスコアに、入管法上の有効期限はない(10年前のものでも有効)。
- 合格証書を紛失した場合は、運営団体に「成績証明書」の発行を依頼する。
- 試験を受けていなくても、海外の大学で日本語を専攻していればポイント対象になる。
書類の再発行には時間を要するため、申請を検討している段階で手元の証書を確認し、見当たらない場合は直ちに再発行手続きに着手することが、スムーズな審査への第一歩となります。