日本国外への長期出張が多い場合の在留資格と居住実態の証明について#
グローバルに展開する企業に勤務している場合や、海外に顧客を持つフリーランスの方にとって、日本国外への長期出張は避けられない業務の一部です。しかし、日本の在留資格(ビザ)を持つ外国人にとって、日本を長期間離れることは、在留資格の更新や将来の永住権申請において重大なリスク要因となる可能性があります。
入管法(出入国管理及び難民認定法)において、在留資格は「日本に生活の本拠があること」を前提として付与されます。そのため、年間の大半を海外で過ごしている場合、「日本に在留する必要性がない」と判断される恐れがあります。ここでは、長期出張が重なった場合の居住実態の考え方と、審査において不利にならないための対策について解説します。
在留資格更新における「居住実態」の判断基準#
在留期間更新許可申請において、出入国在留管理庁(入管)は申請人の出入国記録を厳密に確認します。明確な法的基準として「年間何日以上日本にいなければならない」という条文が存在するわけではありませんが、実務上の目安として、一回の出国が3ヶ月(90日)を超える場合や、年間の出国日数が合計で100日から150日を超える場合は、審査が慎重になる傾向があります。
もし年間の半分以上を海外で過ごしている場合、入管の審査官は「生活の拠点は日本ではなく海外にあるのではないか」「日本の在留資格を維持する必要性があるのか」という疑問を抱きます。これにより、本来であれば3年や5年の在留期間が許可されるケースでも、居住実態の希薄さを理由に1年の許可にとどまったり、最悪の場合は更新が不許可になったりするリスクが生じます。
長期出張と永住権申請への影響#
将来的に日本の永住権(Permanent Residency)の取得を考えている場合、長期出張の影響はさらに深刻です。永住許可の要件の一つに「引き続き10年以上日本に在留していること」がありますが、長期の出国はこの「引き続き(継続性)」を中断させる要因となります。
一般的に、連続して90日以上日本を離れた場合、あるいは年間で合計100日〜150日程度日本を離れた場合、在留の継続性がリセットされたとみなされる可能性が高くなります。会社からの命令による出張であっても、この基準は厳格に適用されることが多く、居住歴がゼロからの計算に戻ってしまうことがあります。したがって、永住申請を見据えている場合は、出国日数の管理が極めて重要です。
居住実態を補完するための説明と立証資料#
業務上、どうしても長期出張が避けられない場合、更新申請時に「単に申請書を出すだけ」では不十分です。なぜ日本にいない期間が長かったのか、そしてなぜ今後も日本に在留資格が必要なのかを、客観的な資料とともに合理的に説明する必要があります。
1. 理由書(説明書)の添付#
出張の目的、期間、業務内容、そしてそれが日本法人や日本の国益にとっていかに重要であるかを詳細に記した理由書を作成します。所属機関(会社)からの命令書や辞令の写しを添付し、個人の都合ではなく業務命令であることを明確にします。
2. 生活の拠点が日本にあることの証明#
本人が不在であっても、日本が生活の本拠であることを示す証拠を提出します。
- 住居の維持: 日本の賃貸借契約書や、家賃の支払い記録(通帳の写しなど)を提出し、帰るべき家を維持していることを示します。
- 家族の存在: 配偶者や子供が日本に継続して居住している場合、生活の基盤が日本にある強力な証拠となります。
3. 公的義務の履行#
これが最も重要と言っても過言ではありません。海外にいる間も、日本の住民税、所得税、国民健康保険料(または社会保険料)、年金などを滞納なく支払い続けていることが必須条件です。住民票を抜いてしまう(海外転出届を出す)と、居住実態がないとみなされる可能性が極めて高くなるため、在留資格の維持を優先する場合は、住民票を残し、税金等の支払い義務を果たし続けることが推奨されます。
再入国許可の取得について#
長期出張に出る際、必ず確認しなければならないのが「再入国許可」です。
- みなし再入国許可: 1年以内に日本に戻る場合は、空港で「みなし再入国許可」の意向を示せば足ります(在留カード提示)。
- 再入国許可: 出張が1年を超える可能性がある場合、または在留期限が出国中に切れる可能性がある場合は、事前に入管で正規の「再入国許可」を取得しておく必要があります。有効期間は最長5年(在留期限まで)です。
これを忘れて出国し、1年を経過してしまうと、在留資格そのものが失効してしまいます。長期プロジェクト等の場合は、不測の事態に備えて正規の再入国許可を取得しておくのが安全です。
まとめ#
日本国外への長期出張は、グローバル社会において一般的な働き方ですが、日本の入管制度においては「居住実態の欠如」と捉えられるリスクを孕んでいます。在留資格の更新や永住申請を円滑に進めるためには、日数の管理だけでなく、納税や住居の維持といった「日本社会との結びつき」を客観的に証明し続ける努力が不可欠です。