2026年施行予定の入管法改正による「永住取消要件」の具体的対策#
2024年6月に成立した改正入管難民法により、日本の永住許可制度は大きな転換点を迎えました。この改正法は公布から2年以内の施行とされており、一般的には2026年頃の本格運用が見込まれています。
今回の改正で最も注目を集めているのが、永住者に対する「在留資格の取消し」に関する規定の厳格化です。これまでは、一度永住権を取得すれば、重大な犯罪を犯さない限りその地位は安泰であると考えられてきました。しかし、新制度では納税や社会保険料の納付義務違反などが取消事由として明記され、永住者の法的地位に対する監視が強化されることになります。
本記事では、この改正法の施行に備え、現在永住権を保持している方、あるいはこれから申請を目指す方が講じるべき具体的かつ実務的な対策について、客観的な視点から解説します。
改正法における「永住許可の取消事由」とは#
まず、どのような行為が取消しの対象となるのかを正確に把握する必要があります。改正法第22条の4に追加・修正される主な要件は以下の通りです。
- 公租公課の支払義務違反 国税(所得税など)、地方税(住民税など)、および公的医療保険・年金保険料の納付を履行しない場合が対象となります。特に「故意に」行わなかった場合や、督促を受けてもなお支払わない悪質なケースが想定されています。
- 在留カード受領・携帯義務違反 在留カードの有効期間更新申請を怠ったり、常時の携帯義務に違反したりした場合も、取消しの対象となり得ます。
- 一定の刑罰を受けた場合 これまでの「1年を超える懲役・禁錮」に加え、より短期の刑(例えば窃盗や傷害などによる拘禁刑など)についても、情状によっては取消しの対象となる可能性があります。
なお、すべての違反で即座に永住権が剥奪され、退去強制(強制送還)となるわけではありません。個々の事情を勘案し、永住権を取り消した上で「定住者」等の他の在留資格へ変更させる措置も導入されます。しかし、永住権を失うことの不利益は計り知れません。
対策1:税金・社会保険料の「自動化」と「完納」#
最も具体的かつ即効性のある対策は、税金や社会保険料の未納・遅納を物理的に発生させない仕組みを作ることです。
口座振替(引き落とし)の徹底#
納付書払い(コンビニ払い等)を利用している場合、うっかり支払いを忘れるリスクが常に伴います。また、海外出張中などに納期限が過ぎてしまう可能性もあります。住民税、国民健康保険料、国民年金保険料については、必ず銀行口座からの自動引き落とし、またはクレジットカード払いに設定を変更することが推奨されます。
会社員の場合の注意点#
給与天引き(特別徴収)されている会社員であっても安心はできません。転職の空白期間において、住民税が「普通徴収(自分で納付)」に切り替わることがあります。また、副業収入がある場合の確定申告漏れもリスク要因です。自身の納税状況が常にクリーンであるか、マイナポータル等で定期的に確認する習慣が重要です。
扶養家族の適正化#
税法上の扶養家族の範囲も厳しくチェックされます。本国に住む親族を扶養に入れている場合、送金証明等の実態が伴っていなければ、脱税行為とみなされ、永住権取消の審査において極めて不利に働く可能性があります。
対策2:行政届出の厳守と在留カード管理#
日常生活における些細な手続き漏れが、新制度下では命取りになる可能性があります。
住所変更届出の徹底#
引越しをした場合、住居地の変更届出(転入届)は引越し日から14日以内に行うことが法律で義務付けられています。これを正当な理由なく90日以上行わなかった場合、現在でも取消事由になり得ますが、改正後はより厳格に運用されることが予想されます。「忙しくて忘れていた」という言い訳は通用しないと考え、転居手続きは最優先事項として処理する必要があります。
在留カードの有効期限管理#
永住者であっても、在留カードには7年ごとの有効期間更新(写真は更新)が必要です。これを失念すると不法残留にはなりませんが、カードの有効性に関する義務違反となります。スマートフォンのカレンダー機能等を活用し、期限の数ヶ月前にアラートを設定するなど、自己管理を徹底してください。
対策3:法令遵守意識の再確認#
「故意による公租公課の不履行」という要件が含まれていることから、当局は「法令遵守の意思」を重視します。
例えば、軽微な交通違反であっても、それを繰り返したり、反則金を納付しなかったりすることは、「日本の法令を遵守する意思が欠如している」と判断される材料になり得ます。日常生活におけるコンプライアンス意識を高めることが、永住権を守るための根本的な対策となります。
行政機関同士の連携強化への理解#
今回の改正に伴い、国や地方自治体の職員が、職務上永住者の義務違反の事実を知った場合、出入国在留管理庁へ通報・連絡する連携体制が強化されます。 つまり、市役所の税務課で滞納が発覚すれば、その情報は速やかに入管へ共有されるシステムになるということです。「入管にはバレないだろう」という考えは、今後通用しなくなります。
まとめ#
2026年施行予定の改正法における永住権取消要件は、真面目に日本で生活している外国人にとっては決して恐れるべきものではありません。しかし、手続きのミスや「うっかり」が重大な結果を招くリスクは高まります。 永住権は「一度取れば終わりの権利」ではなく、「継続的な義務履行の上に成り立つ信頼の証」へと性質が変わります。日頃から税・社会保険の支払いを自動化し、届出を適正に行うことこそが、最強の防衛策となります。