転職後の「所属機関に関する届出」を忘れた場合のリスクについて#

日本で「技術・人文知識・国際業務」などの就労系の在留資格を持って働く外国人の方が転職した場合、新たな職場での活動を開始してから14日以内に、出入国在留管理庁(以下、入管)へ「所属機関に関する届出」を提出する義務があります。これは、日本の在留管理制度において非常に重要な手続きの一つです。

しかし、多忙な転職活動の前後で、この届出をうっかり忘れてしまうケースも少なくありません。この届出義務の不履行は、将来の在留資格の更新や変更、さらには永住許可申請において、予期せぬ重大なリスクをもたらす可能性があります。

本記事では、この「所属機関に関する届出」を提出し忘れた場合に、具体的にどのようなリスクが考えられるのか、そして、もし忘れてしまった場合にどう対応すべきかを客観的に解説します。

「所属機関に関する届出」とは#

まず、この届出が法的にどのような位置づけにあるのかを確認します。この届出は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)第19条の16に定められた、中長期在留者の義務です。

  • 対象者: 「技術・人文知識・国際業務」「技能」「経営・管理」といった就労系の在留資格や、「留学」などの在留資格を持つ人が、所属する機関(会社、学校など)の名称や所在地に変更があった場合に届出の対象となります。
  • 届出期限: 転職の場合、新しい会社で働き始めた日、または前の会社を退職した日から14日以内と定められています。両方の事実が発生した場合、それぞれについて届出が必要です。
  • 届出方法: 届出は、地方出入国在留管理局の窓口への持参、郵送、または「出入国在留管理庁電子届出システム」を利用したオンラインでの提出が可能です。

この届出は、入管が在留外国人の活動状況を正確に把握し、適正な在留管理を行うための重要な基盤となっています。したがって、この義務を軽視することはできません。

届出を忘れた場合に生じる具体的なリスク#

届出を期限内に行わなかった場合、以下のような複数のリスクが考えられます。これらのリスクは、将来の日本での生活設計に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

1. 在留期間更新許可申請への影響#

最も直接的かつ頻繁に問題が表面化するのが、在留期間更新許可申請(ビザ更新)の場面です。

入管の審査官は、申請者のこれまでの在留状況全般を審査します。その際、所属機関に関する届出が適切に行われているかどうかも必ず確認されます。届出が提出されていない、あるいは大幅に遅れて提出された事実は、システム上で記録されているため、隠すことはできません。

この義務違反が発覚した場合、審査官から「在留状況が良好ではない」と判断される可能性があります。その結果、以下のような不利益を受けることが考えられます。

  • 在留期間の短縮: これまで3年や5年の在留期間が許可されていたにもかかわらず、次は1年しか許可されない、といったケースです。これは、申請者の在留状況をより慎重に観察する必要があると判断されたことを意味します。
  • 不許可のリスク: 義務違反の程度が悪質である、または他のマイナス要素(納税状況の不備など)と重なった場合、更新申請そのものが不許可となる可能性もゼロではありません。
  • 追加の書類提出要求: 届出が遅れた理由を詳細に説明する「理由書」や「反省文」などの提出を求められることがあります。

2. 在留資格の取消し#

これは最悪のケースですが、法律上は在留資格が取り消される可能性も存在します。

入管法第22条の4第1項第7号には、「正当な理由がなくて、所属機関の変更等の届出をせず、又は虚偽の届出をした場合」は、在留資格の取消事由に該当すると明記されています。

実際には、単に届出を一度忘れたというだけで、直ちに在留資格が取り消されることは稀です。しかし、長期間にわたって意図的に届出を怠っていたり、虚偽の情報を届け出たりするなど、悪質なケースでは、この条文が適用されるリスクが高まります。法律上の根拠がある以上、決して無視できないリスクです。

3. 永住許可申請への影響#

将来的に永住者の在留資格を取得したいと考えている方にとって、この届出義務の遵守は極めて重要です。

永住許可の審査では、申請者が日本の法律を遵守し、公的義務を誠実に履行してきたかが厳しく評価されます。「素行が善良であること」という要件があり、これには納税、年金・健康保険料の納付といった義務に加え、入管法に定められた各種届出義務の履行も含まれます。

過去に所属機関の届出を怠った事実があると、公的義務を軽視していると判断され、永住許可申請において不利に働く可能性があります。

4. 罰則(過料)#

入管法第71条の3には、届出を怠った者に対し「20万円以下の過料に処する」という罰則規定があります。

在留資格の取消しと同様、この罰則が実際に科されるケースは多くはありませんが、法律で定められている以上、その可能性は存在します。

届出を忘れたことに気づいた場合の対処法#

もし、届出を忘れていたことに気づいた場合は、パニックにならず、速やかに誠実な対応をすることが何よりも重要です。

  1. 直ちに届出を行う: 気づいた時点ですぐに届出をしてください。遅れたからといって提出を躊躇するのは、状況をさらに悪化させるだけです。
  2. 遅延理由書を添付する: 届出書と合わせて、なぜ届出が遅れてしまったのかを説明する「遅延理由書」を任意で添付することが推奨されます。理由書には、「転職後の業務に追われ、手続きを失念していました」「届出義務について認識がありませんでした」など、正直な理由を簡潔に記載し、今後は法令を遵守する旨を記します。悪意がなかったことを示す上で有効な手段です。

遅れてでも自主的に届出を行い、誠実な態度を示すことで、将来の審査における心証が大きく変わる可能性があります。

まとめ#

転職時の「所属機関に関する届出」は、単なる事務手続きではなく、在留資格を維持し、安定した日本での生活を続けるための重要な法的義務です。この届出を忘れると、ビザの更新が厳しくなったり、永住申請で不利になったりと、将来にわたって様々なリスクを抱えることになります。

転職の際は、新しい仕事の準備と並行して、必ず14日以内に入管への届出を完了させることを忘れないでください。もし忘れてしまった場合でも、決して放置せず、気づいた時点ですぐに誠実に対応することが、リスクを最小限に抑えるための最善策です。


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