理由書の作成におけるChatGPT利用とそのまま提出する際のリスクについて#

生成AI技術の発展により、ChatGPT等を利用して文章を作成することが日常的になりました。日本の入管局(出入国在留管理庁)へ提出する「理由書」や「申請理由書」の作成においても、こうしたツールを活用しようと考える申請者は少なくありません。しかし、AIが生成した文章を、内容の十分な検証なしに「そのまま」提出することには、申請の許否に関わる重大なリスクが潜んでいます。ここでは、日本の入管制度の観点から、AI生成文章を提出する際の注意点と、審査における懸念点を客観的に解説します。

入管審査における「理由書」の重要性#

まず前提として、入管申請における「理由書」が持つ意味を理解する必要があります。これは単なる作文や感想文ではなく、申請人が「出入国管理及び難民認定法(入管法)」に定められた在留資格の要件を満たしていることを立証するための重要な疎明資料です。

審査官はこの文書を通じて、申請に至った経緯、申請人の日本での活動内容、そしてその活動の信憑性を判断します。したがって、事実に基づいた正確な情報と、申請人固有の事情が具体的に記載されていることが求められます。

AI特有の「ハルシネーション」による虚偽申告のリスク#

ChatGPTなどの生成AIには、もっともらしい嘘をつく「ハルシネーション(幻覚)」という現象が起こり得ます。例えば、申請人の経歴や勤務先の事業内容についてAIに執筆させると、事実とは異なる架空の実績や業務内容を勝手に創作して記述してしまうことがあります。

入管審査において、事実と異なる記述は致命的です。もしAIが作成した誤った情報をそのまま提出してしまった場合、審査官はそれを「虚偽の申告」とみなす可能性があります。悪意がなかったとしても、提出された書類に虚偽が含まれていれば、申請は不許可となる可能性が高く、最悪の場合、虚偽申請として将来にわたって日本への入国・在留が困難になる恐れもあります。

整合性の欠如と審査官の心証#

入管への申請書類は、理由書だけでなく、履歴書、申請書、立証資料(雇用契約書や卒業証明書など)とセットで審査されます。これら全ての書類の内容に矛盾がないこと(整合性)が極めて重要です。

AIは、同時に提出する他の書類の内容まで詳細に把握して文章を作成するわけではありません。その結果、履歴書の日付と理由書内の経緯が食い違っていたり、雇用契約書に記載された職務内容と理由書での説明が異なっていたりするケースが発生します。このような不整合は、審査官に「申請内容全体の信憑性が疑わしい」という心証を与え、審査が長期化したり、追加資料の提出を求められたりする原因となります。

「一般的すぎる」内容による立証不足#

入管審査では、「個別の事情」が重視されます。なぜ「この会社」でなければならないのか、なぜ「この申請人」でなければならないのかという具体性が求められます。

しかし、AIが生成する文章は、インターネット上の一般的な情報を学習しているため、どうしても「総花的で抽象的な文章」になりがちです。「日本の文化が好きだから」「一生懸命働きたいから」といった、誰にでも当てはまるような美辞麗句が並べられただけの理由書では、入管法上の要件(例えば「技術・人文知識・国際業務」における専門性や業務との関連性など)を満たしていることの証明としては弱くなります。具体性に欠ける理由書は、立証資料としての価値が低いと判断される傾向にあります。

日本語能力との乖離(かいり)#

留学生や日本語を学ぶ申請人の場合、本人の日本語能力と提出された理由書の日本語レベルに著しい乖離がある場合も注意が必要です。

AIが作成する日本語は、文法的に完璧で高度な語彙を含むことが多いですが、申請人本人の日本語能力(JLPTのレベルや過去の在留歴など)と比較して不自然に流暢すぎる場合、審査官は「本人が作成したものではない」あるいは「代筆業者やAIによる作成である」と疑う可能性があります。もちろん、他者の助けを借りること自体は禁止されていませんが、内容を本人が理解していないとみなされれば、面接調査などが行われた際に答えられず、申請の真正性が疑われることになります。

生成AIを適切に活用するために#

ChatGPTを入管申請に利用すること自体が悪いわけではありません。下書きの作成、構成の検討、あるいは母国語で書いた内容の翻訳補助として利用することは有用です。しかし、以下のプロセスは人間が責任を持って行う必要があります。

  1. 事実確認(ファクトチェック): 書かれている日付、名称、経緯が100%事実と一致しているか確認する。
  2. 具体化(オリジナリティ): AIが書いた一般的な表現を、自分自身の具体的なエピソードや固有の事情に書き換える。
  3. 整合性の確認: 他の提出書類(履歴書や契約書)と内容に矛盾がないか照らし合わせる。
  4. 自分の言葉への修正: 自分が理解でき、説明できる表現に修正する。

まとめ#

入管への申請書類は、法的効果を持つ公的な文書です。ChatGPTで出力された文章をそのまま提出することは、虚偽申告や立証不足のリスクを招き、結果として在留資格が得られないという重大な不利益につながる可能性があります。AIはあくまで補助ツールとして利用し、最終的な内容の正確性と真実性については、申請人自身が責任を持って確認し、仕上げることが不可欠です。


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