高度専門職ポイント計算表における自己申告と立証資料の不一致への対応#

日本の出入国在留管理庁が定める「高度専門職」の在留資格は、学歴、職歴、年収などの項目ごとにポイントを付与し、その合計が70点以上ある場合に優遇措置を与える制度です。この制度を利用する際、最も頻繁に発生し、かつ審査の否決に直結する問題が、申請者自身が行った「自己申告」のポイント数と、提出された「立証資料」によって入管局が認定するポイント数の不一致です。

本記事では、この不一致がなぜ発生するのか、具体的にどの項目で乖離が生じやすいのか、そして審査過程においてどのように取り扱われるのかについて、客観的な視点から解説します。

ポイント制度の根本的な理解#

まず理解しなければならないのは、高度専門職のポイント計算表は、単なるアンケートではなく「法的要件の確認リスト」であるという点です。申請者が「自分は条件を満たしている」と考えて計算表にチェックを入れたとしても、それを客観的に証明する公的な文書(立証資料)が存在しなければ、そのポイントは一切認められません。

入管の審査官は、提出された資料のみに基づいて厳格に採点を行います。したがって、自己評価と客観的証拠の間には、しばしば認識のズレが生じます。

最も不一致が生じやすい項目:実務経験(職歴)#

職歴に関するポイントは、不一致が最も起きやすい項目の一つです。例えば「10年の実務経験がある」と自己申告し、20ポイントを加算していたとしても、以下の理由で認められないケースが多発します。

  1. 在職証明書の記載内容不足: 過去の勤務先から発行された在職証明書に、具体的な職務内容が記載されていない場合、その期間が申請する業務に関連する「実務経験」として認められないことがあります。単に「在籍していた」ことの証明だけでは不十分であり、どのような業務に従事していたかが問われます。

  2. 重複期間の計算: 複数の企業に同時に所属していた期間や、大学院に在籍しながら働いていた期間(研究活動とみなされる場合を除く)の取り扱いについて、申請者の計算と入管の計算方法が異なる場合があります。

  3. アルバイト期間の除外: 学生時代のアルバイト等は、通常、高度専門職における「実務経験」には含まれません。しかし、申請者がこれを含めて計算してしまい、審査で否認されるケースが見受けられます。

年収(契約機関から受ける報酬)の定義に関する誤解#

年収ポイントもまた、大きな落とし穴となり得ます。高度専門職における年収は「過去の年収」ではなく、これから日本で従事する活動から得られる「予定年収」で判断されます。しかし、ここには厳格なルールがあります。

  • 残業代や賞与の扱い: 確実に見込まれる賞与(ボーナス)は含めることができますが、業績連動型で変動する部分や、超過勤務手当(残業代)は、原則としてポイント計算の基礎となる年収には含められません。
  • 証明資料との整合性: 雇用契約書や労働条件通知書に記載された金額と、ポイント計算表の数値が1円でも異なれば、説明を求められるか、低い方の金額で認定されることになります。

自己申告で「残業を含めれば年収600万円を超える」としてポイントを加算しても、契約書上の固定給が基準を満たしていなければ、そのポイントは剥奪されます。

学歴および資格の認定基準#

学歴についても、単に卒業証書があればよいというわけではありません。特に以下のケースで不一致が生じます。

  • MBA(経営学修士)の加点: MBAに対する加点は、特定の認証機関から認定を受けたビジネススクール等の学位である必要があります。名称がMBAであっても、基準を満たさない場合は通常の修士号としてのポイントしか付与されません。
  • 日本語能力: 日本語能力試験(JLPT)のN1またはN2合格証書がない場合でも、日本の大学を卒業していれば加点対象となりますが、海外の大学で日本語を専攻しただけでは、N1相当のポイント(15点)は認められず、N2相当(10点)となるなどの細かい規定があります。

不一致が判明した場合の審査への影響#

審査過程において、立証資料が自己申告のポイントを裏付けられないと判断された場合、入管局はポイントを減点します。その結果として合計点が70点を下回った場合、申請は不許可となります。

一方で、ある項目が否認されても、他の項目で十分なポイントがあり、合計が依然として70点以上維持されている場合は、許可される可能性があります。しかし、申請書類の信憑性に疑義が生じると、追加の資料提出通知(資料提出要求)が届き、審査期間が長期化する原因となります。

まとめ#

高度専門職ビザの申請において、ポイント計算表の自己申告は「希望的観測」ではなく「確実な証拠に基づく事実」でなければなりません。立証資料と申告内容の不一致は、単なる計算ミスではなく、立証責任を果たしていないとみなされます。

これから申請を行う場合は、各項目のポイントが「確実に証明できるものか」を、手元の資料(卒業証明書、在職証明書、雇用契約書等)と照らし合わせて厳密に確認することが求められます。ボーダーライン上の点数で申請する場合は、特に慎重な資料準備が必要です。


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