複数の勤務先からの収入がある場合の高度人材ポイント計算について#
高度専門職ビザの取得を検討する際、「高度人材ポイント制」におけるポイント計算は非常に重要な要素です。中でも「年収」に関する項目は配点が高く、基準をクリアできるかどうかが許可の鍵を握ることも少なくありません。しかし、複数の会社から給与や報酬を得ている場合、どの収入を合算して計算できるのか、その基準は一見して分かりにくい部分があります。
本記事では、日本の入管制度における公式な情報に基づき、複数の収入源がある場合の高度人材ポイントの計算方法について、誠実かつ客観的に解説します。
高度人材ポイント制における年収の基本原則#
まず理解すべき最も重要な原則は、ポイント計算の対象となる年収は、「主たる活動」を行う日本の機関との契約に基づいて支払われる報酬の年額であるということです。
出入国在留管理庁が定める高度人材ポイント計算表には、「報酬」の項目があり、申請者の年収に応じてポイントが付与されます。この「報酬」とは、これから日本で行う高度専門職としての活動に対して、雇用契約等を結んだ機関から支払われることが確定している年間の給与総額(税金や社会保険料が引かれる前の金額)を指します。
つまり、ポイント計算は過去の実績ではなく、将来見込まれる年収を基に行われます。そのため、申請時には雇用契約書や労働条件通知書などで、その見込み年収額を客観的に証明する必要があります。
複数の収入源がある場合の具体的な計算方法#
複数の会社と契約している場合、すべての収入を単純に合算できるわけではありません。原則として、以下のルールが適用されます。
1. 主たる活動を行う機関からの報酬のみが対象
高度専門職の在留資格は、申請者が行う特定の専門的活動(例:ITエンジニア、研究者、経営者など)を「主たる活動」として許可されます。そのため、ポイント計算の基礎となる年収は、その主たる活動を行う一社からの報酬に限られます。
【具体例】
- 主たる勤務先(A社): ITエンジニアとして雇用契約。年収700万円。
- 副業(B社): 週末に翻訳業務を業務委託で請け負う。年間報酬100万円。
この場合、ポイント計算の対象となる年収は、主たる活動であるA社からの700万円のみです。B社からの副業収入100万円は、主たる活動とは異なるため、原則として合算することはできません。
2. 複数の活動が一体と見なされる例外的なケース
原則は上記の通りですが、例外的に複数の機関からの収入を合算できる可能性が全くないわけではありません。それは、複数の機関で行う活動全体が、一つの**統合された「高度専門職活動」**であると合理的に説明できる場合です。
【考えられる例】
- 大学の常勤研究者が、専門分野の知見を活かして、他の研究機関や企業と共同研究契約を結び、報酬を得る場合。
- フリーランスのコンサルタントが、複数の企業とコンサルティング契約を結んでおり、それらの活動が全体として一つの専門業務を構成している場合。
このようなケースでは、それぞれの契約が独立した副業ではなく、相互に関連し、一体となって一つの高度な専門的活動を形成していることを証明する必要があります。申請の際には、なぜこれらの活動が一体であるのかを詳細に記述した理由書や、各契約の内容、業務の関連性を示す資料などを提出し、審査官にその合理性を理解してもらうことが不可欠です。
ただし、この判断は出入国在留管理庁の裁量に委ねられており、認められるハードルは非常に高いとされています。安易に合算して申請するのではなく、個別の事情を慎重に検討する必要があります。
収入を証明するために必要な書類#
ポイント計算の根拠となる年収は、客観的な資料によって証明しなければなりません。
- 雇用契約書または労働条件通知書: これから得られる見込み年収額が明記されている最も重要な書類です。
- 給与所得の源泉徴収票または納税証明書: 既に日本で就労している場合、過去の収入実績を証明する補足資料として提出します。ただし、ポイント計算の主体はあくまで将来の見込み年収です。
- 複数の収入を合算申請する場合の追加資料: 各機関との契約書、業務内容の関連性を示す説明資料、活動が一体であることを論理的に説明した理由書など、特別な準備が必要となります。
まとめ#
複数の会社から収入を得ている場合の高度人材ポイント計算は、以下の点が重要です。
- 原則: ポイント計算の対象となる年収は、在留資格の基礎となる「主たる活動」を行う一社からの報酬のみです。
- 副業収入: 主たる活動と関連性のない副業収入は、原則として合算できません。
- 例外: 複数の活動が全体として一つの高度専門職活動と見なせる場合に限り、収入の合算が認められる可能性がありますが、その立証は容易ではありません。
最終的な判断は、提出された資料を基に出入国在留管理庁が個別の事案ごとに行います。そのため、ご自身の状況がどのケースに当てはまるかを正確に把握し、適切な書類を準備して申請に臨むことが極めて重要です。