高度人材がフリーランスとして活動する場合のポイント維持の難しさ#

日本の入管制度において、「高度専門職(Highly Skilled Professional)」の在留資格は、学歴、職歴、年収などをポイント化し、合計点数が70点以上ある場合に優遇措置を与える制度です。通常、この資格は企業に雇用される会社員を想定して設計されていますが、フリーランス(個人事業主)として活動するエンジニアやクリエイターがこの資格を取得・維持することは、制度上不可能ではありません。しかし、実務上は非常に高いハードルと特有のリスクが存在します。

ここでは、高度専門職としての地位をフリーランスが維持する際に直面する「ポイント維持の難しさ」について、制度の仕組みに基づき客観的に解説します。

所属機関(契約機関)の概念と制約#

高度専門職ビザの最大の前提は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて活動を行う」ことです。会社員であれば雇用主が「所属機関」となりますが、フリーランスの場合、業務委託契約を結ぶクライアント企業がこれに該当します。

フリーランスが直面する最初の課題は、「特定の機関」からの報酬のみがポイント計算の対象になるという点です。

フリーランスは通常、複数のクライアントと契約し、収入源を分散させることで経営を安定させます。しかし、高度専門職のポイント計算における「年収」は、入国管理局に届け出た主たる所属機関(メインの契約先)から受ける報酬に限られます。副業的な他のクライアントからの収入を合算してポイントを嵩上げすることは、原則として認められません。

例えば、A社から400万円、B社から300万円、C社から300万円、合計1,000万円の年収があるフリーランスの場合でも、A社を所属機関として申請すれば、年収ポイントは「400万円」の区分で計算されます。これにより、年収要件でのポイント獲得が著しく困難になります。

年収の安定性と更新時のリスク#

高度専門職ビザは、許可時だけでなく、在留期間中もそのポイント水準を維持していることが求められます。特にフリーランスにとって致命的となり得るのは、契約の流動性です。

契約終了によるポイント喪失#

雇用契約であれば、労働法による保護があり、解雇は容易ではありません。一方、フリーランスの業務委託契約は、プロジェクトの完了や企業の予算都合により、比較的容易に終了します。もし、所属機関として申請していた企業との契約が終了した場合、その時点で「年収」の根拠が失われます。

速やかに同等以上の報酬条件で別の企業と契約し、所属機関の変更手続きを行わなければ、次回の在留期間更新許可申請においてポイント不足と判断され、高度専門職の地位を失うことになります。

報酬の変動と最低基準#

高度専門職1号ロ(技術・人文知識・国際業務に相当する活動)の場合、年収が300万円を下回ると、たとえ他の項目で高得点を稼いでいても足切りとなり、資格自体が認められません。フリーランス契約において「成果報酬型」が含まれる場合、確実な年収証明が難しく、入管審査においては「契約書に明記された確定報酬額」が重視されます。見込み年収では審査が通らないリスクがあります。

実務経験の立証における難易度#

ポイント計算には「実務経験」の年数も大きく影響します。会社員であれば、過去の勤務先から「在職証明書」を取得することで容易に証明可能です。

しかし、フリーランスとして活動してきた期間を実務経験としてカウントする場合、証明の難易度が上がります。単に「フリーランスでした」と主張するだけでは認められず、過去の取引先との契約書、成果物、確定申告書などを網羅的に提出し、その期間に間違いなく該当する専門業務に従事していたことを立証しなければなりません。特に海外でフリーランス活動をしていた場合、これらの資料を整えることは多大な労力を要します。

高度専門職2号への移行と永住申請への影響#

高度専門職として活動する多くの人の目標は、在留期限が無期限となる「高度専門職2号」への移行や、早期の「永住許可」取得です。これらを目指す場合、フリーランスであることは審査の厳格化を招く可能性があります。

永住審査においては「生活の安定性」が重視されます。特定の企業に雇用されていないフリーランスは、収入の安定性をより厳しく審査される傾向にあります。高度専門職としてのポイント計算上の年収(主たる契約先からの報酬)が維持できていたとしても、契約期間が短期ごとの更新であったり、納税状況(国民健康保険や国民年金の支払い)に遅れがあったりすれば、不許可となるリスクが高まります。会社員であれば給与天引きで完結する税・社会保険の手続きを、すべて自己責任で管理し、1日の遅れもなく納付し続ける厳格なコンプライアンスが求められます。

まとめ#

フリーランスが高度専門職ビザを取得・維持することは、制度上排除されてはいませんが、会社員と比較して圧倒的に不利な構造になっています。「収入の合算ができないことによるポイント不足」と「契約打ち切りによる地位喪失リスク」が最大の懸念点です。

したがって、高度専門職として日本に在留する場合、形式上はフリーランスのような働き方であっても、在留資格手続き上は「特定の1社と高額かつ長期の安定した業務委託契約を結ぶ」か、あるいは「自身で会社を設立し、経営・管理ビザや高度専門職(経営)を目指す」等の戦略的な選択が求められます。フリーランスという自由な働き方と、高度専門職という厳格な要件の間には、慎重に埋めるべきギャップが存在することを理解する必要があります。


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