給与の未払いがある状態で永住申請を行うべきか#

日本における永住許可申請は、在留資格の中で最も審査が厳格に行われる手続きの一つです。多くの申請者が長年の日本滞在を経て申請に至りますが、その際に問題となるのが「給与の未払い」や「給与遅配」の事実です。勤務先の経営状況悪化や労働トラブルにより、本来受け取るべき給与が支払われていないケースが見受けられます。

結論から申し上げますと、給与の未払いが発生している最中に永住申請を強行することは、極めてリスクが高く、不許可となる可能性が濃厚であると言わざるを得ません。ここでは、なぜ未払い状態での申請が推奨されないのか、入管法および審査要領の観点から客観的に解説します。

独立の生計を営むに足りる資産又は技能(独立生計要件)の欠如#

永住許可の要件の一つに「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」があります。これは、申請者が日本で将来にわたって公共の負担にならず、安定した生活を送れることを求めています。

一般的に、永住申請においては直近数年(通常は3年または5年、配偶者等の場合は異なる)の年収が審査対象となります。目安として年収300万円以上が求められることが多いですが、扶養人数によってはさらに高い額が必要となります。

給与の未払いがある場合、以下の点でこの要件を満たさないと判断される可能性が高まります。

  1. 課税証明書の所得額低下 入管は、市区町村が発行する「課税証明書」に基づいて所得を確認します。給与が支払われていない場合、あるいは遅配が続いている場合、その年の確定した所得額が基準を下回る可能性があります。たとえ労働契約上の年収が高くても、実態としての収入がなければ、生計の安定性は認められません。

  2. 生活基盤の不安定さ 給与が支払われない企業に在籍していること自体が、生活基盤の不安定さを露呈しています。入管は「現在」および「将来」の安定性を重視するため、経営難の企業に依存している状態はマイナス評価となります。

公的義務の履行(素行善良要件・国益適合要件)への影響#

給与未払いは、単に手取り収入が減るだけでなく、税金や社会保険料の未納に直結する危険性を含んでいます。永住審査において、税金(住民税・所得税)および社会保険(健康保険・年金)の納付状況は、最も厳しくチェックされる項目です。

住民税の特別徴収と未納リスク#

通常、会社員であれば住民税は給与から天引き(特別徴収)されます。しかし、給与自体が支払われていない場合、天引きも行われない可能性があります。また、会社が給与から天引きしているにもかかわらず、資金繰りの悪化により会社が自治体へ納税していないというケースも稀に存在します。

申請者の責任ではないと思われるかもしれませんが、入管審査においては「結果として納税がなされているか」が重視されます。未納期間がある場合、あるいは納期限を守れていない場合、永住許可はほぼ確実に下りません。給与未払いが原因で普通徴収(自分で納付)に切り替える手続きが遅れ、未納が発生してしまうケースは致命的です。

社会保険料の納付#

厚生年金や健康保険料も同様です。給与未払い期間中、会社が社会保険料を納付していないと、申請者の年金記録に未納や空白期間が生じることになります。これにより「公的義務を適正に履行している」とは認められなくなります。

理由書での説明には限界がある#

申請時に「理由書」を添付し、給与未払いが会社の責任であり、自分には非がないことを主張することは可能です。しかし、永住審査は「同情」や「道義的責任」を問う場ではなく、あくまで「日本の国益に適合するか」「安定して日本に在留できるか」を法的に審査する場です。

たとえ申請者が被害者であったとしても、経済的基盤が崩れている事実は変わりません。「現在は給与が出ていないが、永住権をくれれば安心して暮らせる」という論理は通用せず、入管は「まず生活を安定させ、未払いや未納を解消してから申請してください」という判断を下します。

具体的な対策と推奨される行動#

給与の未払いがある状態で申請を強行するのではなく、以下の手順で状況を整理することが先決です。

  1. 未払い問題の解決 労働基準監督署への相談や法的手段を通じて、未払い賃金の回収を試みる、あるいは転職をして安定した収入源を確保することが最優先です。
  2. 納税・社会保険の確認 給与が出ていなくても、住民税や国民健康保険・国民年金への切り替えを行い、自力で納付を済ませておく必要があります。ここで「未納」を作らないことが、将来の再申請において極めて重要です。
  3. 実績の再構築 転職等により収入が安定し、かつ納税・社会保険の支払いが遅延なく行われている実績を(通常は直近1年~3年以上)積み上げてから申請を行うのが、最も確実な道筋です。

まとめ#

給与の未払いがある状態での永住申請は、年収要件の不足や公的義務の不履行につながるリスクが高く、不許可になる可能性が極めて高いと言えます。申請を焦るのではなく、まずは生活基盤の立て直しと、税金・保険料の適正な処理を優先させることが、結果として永住許可への近道となります。


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