永住申請書の賞罰欄に記載すべき事項と事実を隠蔽することのリスク#
日本の永住許可申請において、多くの申請者が不安を抱く項目の一つが申請書にある「賞罰(犯罪の有無)」の欄です。過去に交通違反や軽微な法令違反がある場合、それを正直に書くべきか、あるいは黙っていればバレないのではないか、と迷うケースが少なくありません。
しかし、結論から申し上げますと、入管行政における審査において「隠蔽」は致命的な結果を招きます。ここでは、永住申請における賞罰欄の正しい書き方、記載すべき範囲、そして不利益な事実を隠そうとした場合に生じる甚大なリスクについて、客観的な視点から解説します。
永住審査における「素行要件」と賞罰の定義#
永住許可のガイドラインには「素行が善良であること」という要件があります。これは、法律を遵守し、日常生活において住民として社会的非難を受けることのない生活を営んでいることを意味します。申請書の「賞罰」に関する質問は、この素行要件を確認するための重要な自己申告の場です。
ここでいう「罰」には、日本の刑法犯だけでなく、道路交通法違反などの行政罰や刑事罰も含まれます。具体的には以下の内容が対象となります。
- 懲役・禁錮刑: 執行猶予がついた場合も含みます。
- 罰金・科料: 略式起訴による罰金刑も含みます。
- 交通違反: 反則金(青切符)や罰金(赤切符)。
交通違反はどこまで書くべきか#
最も判断に迷うのが交通違反です。原則として、違反の事実がある以上は、その大小にかかわらず正確に申告する姿勢が求められます。
軽微な違反(青切符)#
駐車違反や一時停止違反などの軽微な違反で、反則金を納付して完了したものは、厳密には「前科」としての刑事罰ではありません。しかし、永住審査においては過去数年間の交通違反歴もチェックされます。年に数回程度の軽微な違反であれば直ちに不許可になるわけではありませんが、回数が多い場合は「遵法意識が低い」とみなされます。申請書に記載欄がない場合でも、理由書などで違反歴を自主的に開示し、反省の意を示すことが誠実な対応とされます。
重大な違反(赤切符)#
大幅な速度超過や飲酒運転、無免許運転などで「罰金刑」以上の処分を受けた場合は、立派な犯罪歴(前科)となります。これは必ず申請書に記載しなければなりません。
過去の犯罪歴の申告について#
万引き、傷害、公然わいせつ等で警察の厄介になった場合、たとえ逮捕されずに微罪処分で終わったとしても、あるいは不起訴になったとしても、その経緯について問われた場合は正直に答える必要があります。
特に、罰金刑を受けた場合や執行猶予付きの判決を受けた場合は、法的に定められた期間(罰金刑は納付完了から5年、執行猶予は期間満了から一定期間など)が経過して「刑の消滅」を見るまでは、永住許可を取得することは極めて困難です。しかし、期間が経過していないからといって隠して申請すれば、さらに状況は悪化します。
隠蔽がバレるメカニズムと「虚偽申請」のリスク#
「昔のことだからバレないだろう」「海外でのことだからわからないだろう」と考え、賞罰欄に「なし」と記載して提出することは、絶対にしてはいけません。
入出国在留管理庁は、申請者の審査にあたり、警察庁などの関係機関と連携して犯罪記録を照会する権限を持っています。つまり、日本国内での犯罪歴や交通違反歴は、申請者が隠そうとしても、審査官は全て把握できる立場にあります。
もし、事実と異なる申告(不申告を含む)をした場合、それは「虚偽申請」とみなされます。本来であれば、違反の内容自体は永住許可を直ちに否定するほどのものでなかったとしても、「入管を欺こうとした」という事実そのものが、素行要件における決定的なマイナス評価となります。
虚偽申請による不許可は、単に今回の申請が通らないだけでなく、将来の申請に対しても「過去に嘘をついた申請者」という記録が残り、信頼回復には長い年月を要することになります。最悪の場合、現在保有している在留資格の取り消し事由に該当する可能性すらあります。
正しい対処法と心構え#
過去に過ちがある場合、取るべき対応は以下の通りです。
- 事実を正確に記載する: 違反の日時、内容、処分の結果を包み隠さず記載します。記憶が曖昧な場合は、「運転記録証明書」を取得するなどして正確な情報を把握してください。
- 反省文を提出する: 単に事実を書くだけでなく、その行為を深く反省し、現在は改善していること(例:その後◯年間無事故無違反である等)を説明する書類を添付します。
- 申請時期を見極める: 重大な違反がある場合は、直ちに申請するのではなく、素行善良と認められるまでの一定期間(実績作り)を経てから申請することを検討します。
まとめ#
永住申請における賞罰欄の記載は、申請者の誠実さを問う「踏み絵」のような側面があります。過去の過ちは消せませんが、それを隠蔽しようとする現在の行為は、審査において最も重い罪となります。たとえ不利な事実であっても、正直に申告し、反省と更生の姿勢を示すことが、永住許可への唯一の道です。制度の仕組みを正しく理解し、誠実な申請を行うことが推奨されます。