入管から資料の「偽造」を疑われた場合の適切な反論と立証方法#
日本の出入国在留管理庁(入管)における審査は非常に厳格であり、提出された資料、特に本国で発行された卒業証明書、銀行残高証明書、出生証明書などの信憑性について疑義を持たれることは珍しくありません。
もし審査官から「提出された資料に偽造の疑いがある」あるいは「真正なものとは認められない」といった指摘を受けた場合、あるいは不許可理由として資料の信憑性が挙げられた場合、申請人は極めて慎重かつ論理的な対応を求められます。単に「これは本物です」と主張するだけでは、疑いを晴らすことは困難です。
ここでは、資料の真正性を疑われた際に、客観的な証拠に基づいて反論し、資料の信頼性を回復するための具体的な方法について解説します。
なぜ「偽造」や「信憑性なし」と判断されるのか#
反論を行う前に、なぜ入管がその資料を疑っているのか、その背景を理解する必要があります。入管審査官は日々膨大な数の海外文書を目にしており、以下のような特徴がある場合に警戒心を強めます。
- 書式の不一致: 過去に提出された同種の証明書と、フォント、レイアウト、紙質、インクの色などが異なる場合。
- 記載内容の矛盾: 生年月日や氏名のスペルミス、発行日が休館日である、決裁者の署名が当時の在職者と異なるなどの矛盾がある場合。
- 発行機関の実態不明: 学校や会社の連絡先が存在しない、または電話がつながらない場合。
- 国情によるリスク: 公的書類の偽造が横行している国や地域からの書類である場合、審査基準が厳しくなります。
重要なのは、「本物であること」と「本物であると審査官に信じてもらうこと」は別問題であるという認識を持つことです。たとえ真正な書類であっても、客観的な信用性が担保できなければ、入管実務上は「偽造」あるいは「立証資料として不適格」として扱われるリスクがあります。
立証責任は「申請人」にある#
日本の入管法上の手続きにおいて、提出資料が真正であることを証明する責任(立証責任)は、基本的に申請人側にあります。入管側が「これは偽物だ」と断定する証拠を出す必要はなく、「本物かどうかわからないため、許可の要件を満たしていると確認できない」という理由で不許可にすることが可能です。
したがって、反論を行う際は、感情的に訴えるのではなく、第三者が検証可能な「証拠」を積み上げる必要があります。
具体的な反論・立証のステップ#
資料の信憑性に関する疑義を晴らすためには、以下の方法を組み合わせることが有効です。
1. 外務省認証(アポスティーユ)および領事認証の取得#
最も強力な証明方法は、公的な認証機関を通すことです。
- アポスティーユ(Apostille): ハーグ条約加盟国であれば、本国の外務省でアポスティーユ認証を受けることで、日本の公文書と同等の効力を持つものとして扱われます。
- 領事認証: ハーグ条約非加盟国の場合、本国の外務省で認証を受けた後、現地にある日本大使館・領事館で認証を受けます。
すでに提出済みの書類について疑義が生じた場合、再度同じ書類を発行元から取得し、この認証手続きを経た上で再提出することで、真正性を担保できます。
2. 発行機関による「真正性の確認書」の提出#
発行元(学校、銀行、役所など)に協力を仰ぎ、「いつ、誰に対して、どの番号の証明書を発行したか」を明記した確認書(Verification Letter)を作成してもらう方法です。
- 担当者の氏名、署名、役職、直通連絡先(電話番号、公式ドメインのメールアドレス)を明記してもらうことが重要です。
- 単なるレターヘッド付きの紙ではなく、機関の公印が押されていることが求められます。
3. 発行元から入管への直送、または厳封#
書類が申請人の手を経由することで改ざんの疑いが生じる場合があります。これを防ぐため、以下の方法が有効です。
- 厳封(Sealed Envelope): 発行機関に依頼し、証明書を封筒に入れ、封じ目に割り印を押してもらった状態(未開封)で入管に提出する。
- 直送(Direct Mail): 制度上可能なケースは限られますが、発行機関から日本の入管へ直接郵送してもらう、あるいは真正性を証明するメールを入管の指定アドレス(担当部門がある場合)に送信してもらうよう依頼する。
4. 客観的な補強証拠の提出#
問題となっている書類以外の資料で、事実関係を裏付けます。
- 卒業証書の疑義: 卒業アルバム、成績証明書、学生証、当時の通学定期券の記録、卒業式の写真などを提出し、実際に在籍していた事実を多角的に証明します。
- 職歴証明書の疑義: 給与振込の銀行記録、納税証明書、社会保険の加入記録などを提出します。これらは第三者機関(銀行や税務署)が発行するため、会社発行の書類よりも信用性が高くなります。
誤記や書式の変更が原因である場合#
もし、書類が偽造ではなく、発行機関側のミス(スペルミスや日付の誤り)や、書式の変更が原因で疑われている場合は、その経緯を説明する文書が必要です。
- 発行機関に「誤記訂正書」や「書式変更に関する証明書」を作成してもらいます。「〇〇年よりシステム更新のため書式が変更されましたが、以前の書式も有効です」といった文言が必要です。
- 申請人自身が作成する「理由書」において、なぜ誤りが生じたのか、どのように訂正されたのかを時系列で論理的に説明します。
まとめ#
入管から資料の偽造を疑われた場合、それは申請の拒否だけでなく、将来にわたって日本への入国・在留が困難になる重大な局面です。「本物だから大丈夫」と楽観視せず、認証手続きや補強証拠の収集を行い、客観的に真正性を証明する姿勢が不可欠です。
確実な証拠に基づいた誠実な対応こそが、疑いを晴らし、審査を適正な方向に導く唯一の道筋となります。