永住許可の取消制度の強化と取得後に注意すべき公的義務について#

2024年6月に成立した改正入管難民法において、多くの在留外国人が注目している変更点の一つが「永住許可制度の適正化」、すなわち永住者の在留資格取消事由の拡大です。これまで、一度取得すれば更新の手間がなく、就労制限もない「永住者」の地位は非常に安定したものでした。しかし、今回の法改正により、永住許可取得後であっても、納税や社会保険料の納付といった公的義務を怠った場合、その資格を取り消される可能性が生じました。

ここでは、改正法によって具体的にどのようなケースが取消しの対象となるのか、また永住者が今後より一層注意すべき公的義務とは何かについて、客観的な視点から詳細に解説します。

永住許可取消制度が見直された背景#

日本政府は、少子高齢化に伴う労働力不足を背景に、外国人材の受入れを拡大する方針をとっています。これに伴い、「育成就労」制度の創設など、外国人が日本に定着しやすくなる環境整備が進められています。その一方で、永住者の数も年々増加しており、一部の永住者による税金や社会保険料の滞納、あるいは重大な法令違反が問題視されるようになりました。

永住者は本来、長期間日本に在留し、日本の社会構成員として認められた存在です。そのため、国益に適合し、法令を遵守することが前提とされています。今回の法改正は、永住者が増え続ける中で、公的義務を果たさない者に対して厳格に対処し、制度の適正な運用を図ることを目的としています。

新たに追加された取消事由の具体的内容#

これまでの入管法でも、虚偽の申請によって許可を得た場合や、住所地の届出を行わなかった場合などには取消しの規定がありましたが、適用範囲は限定的でした。今回の改正では、以下の要件が明確に取消事由として強化・追加されています。

1. 公租公課の支払義務違反(故意による不履行)#

最も大きな変更点は、税金(所得税、住民税など)や社会保険料(国民健康保険、国民年金、厚生年金など)の支払いを「故意に」行わなかった場合が取消対象となったことです。

ここで重要なのは「故意に」という点です。経済的な困窮や災害、病気などのやむを得ない事情によって支払いが遅れた場合、直ちに取消しになるわけではありません。しかし、支払い能力があるにもかかわらず意図的に滞納を繰り返したり、督促に応じなかったりするなど、悪質性が高いと判断された場合は対象となります。

2. 住居地の届出義務違反など#

住居地を変更した際に、90日以内に届け出なかった場合や、虚偽の届出をした場合も取消事由に含まれます。また、在留カードの常時携帯義務違反や受領拒否など、入管法上の義務を著しく怠った場合も対象となり得ます。

3. 一定の刑罰を受けた場合#

これまでも、懲役や禁錮刑(執行猶予なし)を受けた場合は退去強制の対象でしたが、改正法では、退去強制事由に当たらない程度の刑罰(例えば、窃盗罪などで執行猶予付きの懲役刑や、特定の罪での罰金刑など)であっても、永住許可の取消し検討の対象となる可能性があります。

永住者が遵守すべき公的義務と注意点#

今回の法改正を受けて、現在「永住者」の在留資格を持っている方、およびこれから申請を考えている方は、以下の公的義務を遵守しているか、改めて確認する必要があります。

納税と社会保険の完納#

住民税や国民健康保険料は、給与天引き(特別徴収)されている会社員であれば会社が処理を行いますが、転職時や個人事業主の場合、自分で納付(普通徴収)する必要があります。うっかり納付期限を過ぎてしまうことがないよう、口座振替を利用するなどの対策が有効です。また、家族の分の保険料や年金についても責任を持つ必要があります。

在留カードの有効期間更新#

「永住者」の在留資格自体に期限はありませんが、「在留カード」には7年の有効期限があります。カードの有効期限が切れても在留資格そのものは失われませんが、更新手続きを怠ることは入管法違反となり、悪質な場合は取消しの審査対象になるリスクがあります。

変更届出の徹底#

引越しをした場合は、転入届を市区町村役場へ速やかに提出する必要があります。これは住民基本台帳法に基づく義務であると同時に、入管法上の義務でもあります。

取消し後の在留資格について#

永住許可が取り消された場合、必ずしも日本から即座に退去させられる(退去強制)わけではありません。悪質性の程度や日本での定着性、家族の状況などを考慮し、個別の事情に応じて「定住者」などの他の在留資格への変更が認められる場合があります。

例えば、税金の未納によって永住許可が取り消されたとしても、日本に家族がいて生活基盤がある場合、就労活動に制限のない別の資格へ切り替えられる可能性がありますが、在留期間の更新手続きが必要になるなど、地位は不安定になります。

まとめ#

今回の法改正による永住許可取消制度の強化は、真面目に日本で生活している外国人にとっては過度に恐れるものではありません。しかし、「永住権を取ればゴール」ではなく、取得後も日本の社会構成員として、納税や社会保険料の納付といった当然の義務を継続して果たすことが、これまで以上に強く求められています。日頃から法令遵守を意識し、公的通知や手続き期限を見落とさないよう管理することが、安定した日本での生活を守ることにつながります。


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