個人事業主から法人化した直後の申請タイミングと事業の継続性について#

日本において事業を営む外国人経営者が、個人事業主(Sole Proprietorship)から株式会社や合同会社などの法人(Corporation)へ組織変更すること、いわゆる「法人成り」を行うケースは少なくありません。

税務上のメリットや社会的信用の向上を目的として行われるこの手続きですが、在留資格「経営・管理」を持つ外国人にとって、最大の懸念事項は「ビザの更新や変更申請において、事業の継続性がどのように判断されるか」という点です。

ここでは、法人化した直後の申請タイミング、および入管審査における事業の継続性の評価基準について、客観的な視点から詳細に解説します。

法人と個人事業主の法的な連続性#

まず理解しておくべき前提として、日本の法律上、個人事業主と法人は全く別の「人格」として扱われます。したがって、入管法上の原則的な解釈では、個人事業主としての実績がそのまま自動的に新設法人の実績としてカウントされるわけではありません。

しかし、実務上の審査においては、形式的な法人格の違いだけでなく「実質的な事業の同一性」が重視されます。つまり、個人事業時代と同じ事業内容、同じ取引先、同じ資産を用いて法人運営が行われている場合、入管はそれを「事業の継続」として柔軟に評価する傾向にあります。

この「実質的な継続性」を証明できるかどうかが、審査の可否を分ける重要なポイントとなります。

法人化直後の申請タイミング#

「法人設立後、最初の決算が終わるまでビザの申請は待つべきか?」という質問が頻繁に挙がりますが、結論から申し上げますと、決算を待つ必要はありません。法人登記が完了し、税務署への届出などの諸手続きが完了した段階で、在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請を行うことは可能です。

ただし、決算期を迎えていない新設法人の場合、当然ながら「法人の決算書(貸借対照表・損益計算書)」が存在しません。通常、既存の企業の審査では決算書によって事業の安定性・継続性を判断しますが、新設法人の場合はその代わりに「事業計画書」が極めて重要な役割を果たします。

提出書類の構成における注意点#

法人化直後の申請では、以下の二つの要素を組み合わせて提出することが求められます。

  1. 新設法人の未来を示す資料

    • 今後1年間の事業計画書(収支計画)
    • 法人設立時の開始貸借対照表
    • 法人名義の賃貸借契約書(または使用承諾書)
    • 役員報酬決定に関する議事録
  2. 個人事業主としての過去の実績資料

    • 個人事業時代の確定申告書(直近数年分)
    • 個人事業廃業届の写し

これらをセットで提出することで、「新設法人ではあるが、事業の実態は過去から積み上げられたものであり、収益の基盤は確立されている」ということを立証します。

資本金500万円と投資の継続性#

「経営・管理」ビザの要件の一つに「500万円以上の出資」または「2名以上の常勤職員の雇用」があります。多くのケースでは500万円以上の出資要件を選択します。

個人事業主時代にすでに500万円以上を投資して事業を行っていた場合でも、法人化する際には改めて資本金の形成について注意が必要です。

  • 金銭出資の場合: 個人口座から法人口座へ資本金を振り込み、その形成過程(資金の出所)が個人事業の利益や過去の貯蓄から来ていることを明確にする必要があります。
  • 現物出資の場合: 個人事業で使用していた資産(車両、在庫、設備など)を現物出資として法人の資本金に組み入れる方法です。この場合、適正な評価額の算定や、定款への記載など、会社法上の手続きが複雑になりますが、資金の移動なしに資本金要件を満たす手段となり得ます。

入管審査では、単に登記簿上の資本金が500万円であることだけでなく、その資産が現実に会社に存在し、事業のために使用されているかが問われます。

役員報酬と生計要件#

個人事業主の場合、売上から経費を引いた残りが「事業所得」となり、それが生活費となります。一方、法人の場合、会社と経営者は別人格であるため、会社から「役員報酬」を受け取る形になります。

法人化直後のビザ申請では、「会社が定期的かつ安定的に役員報酬を支払えるだけの収益力があるか」が厳しく審査されます。

もし個人事業時代に赤字、あるいは極めて低い所得であった場合、法人化したからといって急に高額な役員報酬を設定することは不自然と見なされます。事業計画書において、売上の根拠を明確にし、その中から無理なく役員報酬を支払えることを論理的に説明しなければなりません。役員報酬の額は、経営者が日本で独立して生計を営むに足る額(地域や家族構成によりますが、一般的には月額20万円〜25万円以上がひとつの目安)である必要があります。

赤字決算からの法人成り#

個人事業主として直近が赤字であった場合、法人化して申請すればリセットされると考えるのは誤りです。前述の通り、入管は実質的な継続性を見ますので、個人時代の赤字の原因と、法人化によってそれがどのように改善されるか(コスト削減、信用力向上による売上増など)を合理的に説明できなければ、事業の安定性・継続性に疑義を持たれる可能性があります。

まとめ#

個人事業主から法人化した直後の申請は、形式的には「新規」の側面と、実質的には「更新」の側面を併せ持っています。

  1. 決算を待たずに申請は可能である。
  2. 「事業計画書」と「個人の確定申告書」を併用して連続性を証明する。
  3. 役員報酬の支払い能力を客観的に示す必要がある。

これらのポイントを正確に押さえ、矛盾のない資料を作成することで、スムーズな審査結果を得ることが期待できます。制度の仕組みを正しく理解し、誠実な申請を行うことが重要です。


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